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ディスキング

歯の側面を削る処置

歯列矯正で行うディスキングとは、歯の側面をヤスリのような器具で削る処置です。

“歯を削る”というと、虫歯治療での切削処置が思い浮かぶため、いったい何ミリ削ることになるのか不安に感じる方もいらっしゃることでしょう。

その点はご安心ください。

ディスキングで歯を削る量は、片側で0.25mm程度、両側で0.5mm程度にとどまることから、歯にダメージが及ぶようなことはないのです。

ディスキングにおける切削範囲は、必ずエナメル質内に限定します。

ちなみにディスキングにはIPR(inter-proximal reduction)やストリッピングといった別名もありますが、すべて同じ処置と捉えていただいて問題ありません。

 

 

矯正なのになぜ歯を削るのか?

ディスキングで歯を削る主な目的は、スペースを作り出すことです。

ディスキングで歯を削る量は微々たるものですが、複数の歯に処置を施すことで、まとまったスペースを確保できます。

例えば、6本の歯に対してディスキングを行った場合、合計で3mm程度のスペースを作り出すことができるのです。

これはスペースが不足しているケースにおいて、非常に有益な結果をもたらしてくれることでしょう。

スペースの絶対的な不足を改善できれば、本来は抜歯が必須となるケースも非抜歯に切り替えることが可能となります。

また、矯正の仕上がりも良くなることが期待できます。

 

ディスキングは本当に安全?

ディスキングで削る量はわずかであるとはいえ、健康な歯に傷を付けることに不安を感じる方は少なくありません。

実際、ディスキングをご提案した際にはほとんどの患者さんが「むし歯になりませんか?」「歯がしみそうで怖いです」といったネガティブな反応をされます。

確かに、再生されることのない貴重なエナメル質をわずかであっても削られることは不安なものです。そのお気持ちはよく理解できます。

ただ、ディスキングによってむし歯や知覚過敏のリスクが顕著に増加することはまずありませんのでご安心ください。

もちろん、ディスキングも医療行為の一種である以上、歯にダメージが及ぶリスクはゼロではありません。

ケースによっては、歯がキーンとしみたり、歯茎からの出血を伴ったりする場合もあります。

 

 

【ディスキングのメリット】

抜歯をせずに矯正できる

ディスキングも便宜抜歯も「不足しているスペースを作り出す」ことが主な目的です。

不足しているスペースが軽度から中等度くらいまでなら、ディスキングで対応できることがあります。

つまり、矯正治療における便宜上の抜歯を回避できるのです。

「歯を少し削る」ことと「歯を抜く」ことを天秤にかけた場合、前者を選ぶ人が多いのは事実です。

ただし、後段でも詳しく説明しますが便宜抜歯が絶対的に悪いものではありませんので、誤解のないようにお願いいたします。

 

より良い仕上がりを目指せる

もともと抜歯が不要なケースにもディスキングは適応されます。

それは矯正による仕上がりを良くするためです。

ディスキングによって適度なスペースが確保できれば、歯並びはもちろんのこと、上下の噛み合わせまで微調整が可能となります。

それは患者さんの矯正治療による満足度を大きく向上させることでしょう。

 

歯の後戻りのリスクが減る

歯の後戻りのリスクは、矯正のすべてのケースに伴うものです。

それはリテーナーによる保定処置を行った場合も同じです。

ディスキングで歯の側面を削ると、隣の歯との接触が点から面へと変化するため、歯並びが安定しやすくなります。

その結果、歯の後戻りのリスクを通常よりも低く抑えることが可能となります。

 

【ディスキングのデメリット】

健全なエナメル質を削らなければならない

ディスキングには、むし歯になっていない健全なエナメル質を削らなければならないというデメリットを伴います。

繰り返しになりますが、エナメル質は再生されることがない組織なので、一度削ってしまうと元には戻りません。

例えそれが片側の面で0.25mm程度であったとしても、大きな損失・犠牲と感じる方はいらっしゃることでしょう。

 

歯を削る時に不快症状を伴うことがある

ディスキングでは、むし歯を削る時のような強い痛みや振動を伴うことはまずありません。

そもそも電動のドリルではなく、ヤスリのような器具を使ってゆっくりと削る処置となるため、強い痛みや振動は起こり得ないのです。

けれども、患者さんの歯の状態が悪い場合は、ヤスリで削る時にキーンとしみる場合があります。

歯周病などで歯茎が腫れている場合は、出血を伴うかもしれません。

そうした不快症状は、歯をヤスリで削るだけのディスキングでも起こることがあります。

 

スペース不足が大きい場合は十分な効果が得られない

上述したように、歯少し削るだけで済むディスキングが“善”で、歯を丸ごと抜かなければならない便宜抜歯が“悪”という構図は正しくありません。

なぜならディスキングと便宜抜歯では、それぞれ適応症例に大きな違いがあるからです。

スペースの不足が大きい症例では、ディスキングを行っても十分な効果が得られません。

そうしたケースは小臼歯などを抜歯することで、正しい噛み合わせや美しい歯並びに仕上げることが可能となるのです。

 

ディスキングと抜歯の違い

最後に、ディスキングと比較されることが多い便宜抜歯との違いについても簡単にご説明します。

 

抜歯をすると治療期間が長くなる

便宜抜歯の対象となる小臼歯の頭の部分は、1本あたり7mm程度あります。

それを例えば片側の歯列で2本抜いた場合は、合計14mm程度のスペースが生じることになるのです。

一般的なワイヤー矯正では、1ヵ月に0.5mm程度しか歯を動かすことができないことを考えると、抜歯矯正で治療期間が長くなる理由もすんなり理解できるかと思います。

ディスキングの場合は、抜歯ほど大きなスペースが生じることはないため、治療期間への影響も少ないです。

 

抜歯は歯の本数が少なくなる

永久歯は全部で28本生えてきます。

どれもかけがえのない歯であり、1本でも多く残すことがお口の健康維持・増進には欠かせません。

当然ですが便宜抜歯を行えば、その本数は減ることになります。

もちろん、抜歯が適応される症例は、歯を抜くことでより良い歯並び・噛み合わせに仕上げることができるため、結果としては患者さんのメリットになることは間違いありません。

それをディスキングで代替できるのであれば、患者さんが得るメリットはさらに大きくなることでしょう。

 

抜歯は痛みや感染のリスクを伴う

前から4~5番目の小臼歯は、比較的容易に抜くことができますが、施術後の痛みや腫れは避けられません。

感染のリスクも伴います。

この点も歯の側面を削るだけのディスキングとは大きく異なる点といえます。繰り返しになりますが、抜歯を行うのはディスキングによって十分な効果が得られないケースですので、デメリットだけに着目するのは賢明ではありません。

抜歯によって得られるメリットも踏まえる必要があります。

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