コンフォート入れ歯
コンフォート入れ歯について
コンフォート入れ歯(シリコン義歯)とは
保険の入れ歯の多くは「歯茎」と接する面がレジンと呼ばれるピンク色の硬い素材で出来上がっています。多くの方は装着後に痛みを感じ、歯科医院にて調整が必要とされています。
このコンフォート入れ歯は粘膜面と呼ばれている、この部分を柔らかい生体シリコンで見事に加工した特別な義歯です。
コンフォート入れ歯のメリット
硬い素材で出来ている保険の入れ歯では痛くなった粘膜面を削り調整します。もちろん、この調整で顎堤(がくてい)という、顎の骨やそれを覆っている粘膜と義歯の粘膜面には隙間ができるので、その場では痛みが無くなり効果があるように思われます。しかし、隙間ができた分、そこにかかっていた荷重を他の部分が負担することで、また新たな部分が痛くなってくることが多くあります。これを繰り返すことで丁寧に型取りをして作られている義歯の粘膜面の形が大きく変わり、痛みが取れないだけでなく、たくさんの隙間に「食べかす」が入ってしまう結果になります。
このコンフォート入れ歯は噛む力が直接加わる粘膜面をシリコン加工することで、顎堤に加わる圧力を緩和させるクッション効果があります。
さらに柔らかいシリコンの効果として以下のようなことがが挙げられます。
① 褥瘡発生の予防
褥瘡(じょくそう)とは「床ずれ」のように、擦れることで粘膜が潰瘍化し痛みの原因になることです。
② 調整のための通院回数の減少
問題なく使用できるまでの来院回数、調整回数は通常の義歯で5.5回、シリコン義歯は2.6回という報告もあります。
なぜ、コンフォート入れ歯は痛くないのか?
「型取り、噛み合わせを採る、試し入れをする」ここまでは保険の入れ歯とほぼ同じ治療内容です。本来は次が最終過程である「お渡しを含めた完成、装着」。
しかしコンフォート入れ歯にはもうひとつ、前段階としての治療過程があります。それが痛くならない、大切な治療内容なのです。
ほぼ完成した義歯の粘膜面に「粘膜調整材」を塗布し、実際に3〜5日間使用して頂きます。粘膜調整材はゆっくりと柔らかい状態を維持しながら硬化していきます。ご家庭で食事をしたり、会話することで歯科医院では決して行えない実践的、機能的な形態や荷重されている状態が義歯に印記されるのです。これを再度お預かりして、コンフォート専門技工所にて生体シリコンで復元して完成となります。
これが痛くならない要因なのです。
なぜ、コンフォート入れ歯はよく噛めるのか?
実際の研究でも総入れ歯の患者の咀嚼能力も高くなり、食べられる摂取品目も多くなっていることが報告されています。それは痛みがないシリコン素材のおかげで噛み合わせている時間や噛みしめている時間が長くなることがその要因と考えられます。
また、シリコンの「弾性」(:力が加わった時の変形が、力を除くとともに戻っていく性質)がお口の中の粘膜に近い数字なので、しっかりと噛んでも歯茎に痛みが現れず、咀嚼機能の回復を果たします。
コンフォート入れ歯のデメリット
診療のまずはじめとして型取りを行い、最終的にシリコン加工した「コンフォート入れ歯」をお渡しできるまでの期間が長くかかってしまうことがデメリットと言えます。(約2ヶ月間、保険の入れ歯だと約1ヶ月間)
特殊なシリコン加工となっておりますので、専門の技工所が混雑しているためです。技工所も改善体制となってきましたので、徐々に期間が短縮していくことと思われます。
まずは今まで使用していた義歯を修理・調整などして、コンフォート入れ歯を製作している期間だけでも「仮入れ歯」として使っていただくことをお勧めします。
義歯本体であるアクリルレジンと接着材を介してシリコンをコンフォート加工していますが、この接着面からシリコンが剥がれていくことがあります。条件などは人それぞれではありますが、2〜3年後に義歯をお預かりして再びシリコン加工の修理を行う場合もあります。
また、シリコン加工面の汚れの付着もデメリットの一つではあります。とくにシリコンは分子構造が「疎」であるために「カンジタ菌」が根を張り、除去が困難となり衛生的に不潔になってしまいます。シリコン義歯に特化した「義歯洗浄剤」も販売されるようになりました。格安な義歯洗浄剤もドラッグストアなどで見られますが、当院ではカンジタ菌除去に優れている「clene (クリネ)」を推奨しております。
義歯洗浄用ブラシにも注意が必要です。市販されている多くのブラシは毛先が硬く、シリコン面を傷つけることでさらに汚れがつきやすくなったり、シリコン面の剥離などが起こります。軟毛の義歯洗浄用ブラシと専用洗浄剤、さらに超音波洗浄機のトリプル使用がより、効果的であります。